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福岡高等裁判所那覇支部 平成3年(行コ)3号 判決 1991年12月24日

控訴人

花城清喜

被控訴人

那覇労働基準監督署長宮城盛光

右指定代理人

新垣栄八郎

(他七名)

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立て

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が、平成二年七月五日付けで控訴人に対してなした労働者災害補償保険法による療養補償給付及び休業補償給付を支給しない旨の処分は、これを取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨

第二主張

次のとおり付加するほかは、原判決の「第二 事案の概要及び争点」に記載のとおりであるから、ここにこれを引用する(ただし、原判決二丁裏七行目の「但書」を「ただし書」と改める。)。

一  控訴人

1  労災保険法が、第一審たる審査請求に簡易迅速な処理を期待し、第二審たる再審査請求に厳格慎重な統一的処理を要請する二審制度を採用し(同法三五条)、労働保険審査会における裁決の前置主義を規定していること(同法三七条)を理由として、直ちに行政事件訴訟法八条二項一号の「審査請求」は労災保険法にいう「再審査請求」を指すものと解するのが相当であるとした原判決の解釈は到底納得できない。

労災保険法が二審制度を採用し、労働保険審査会における裁決の前置主義を規定していることは、第一審たる労働者災害補償保険審査官の決定に対して、労働保険審査会への再審査請求をすることなく直ちに出訴することを禁止しているに過ぎないのであって、第一審が三か月を経過しても決定をしないときにまで出訴することを禁止するものではない。

2  現行の行政事件訴訟法八条は、原則として審査請求と取消訴訟との自由選択主義を採用し、審査請求前置はあくまでも例外にしかすぎない。したがって、審査請求前置が採用されている場合においても、それがいたずらに出訴を制限するような弊害を生じないように配慮する必要がある。

行政事件訴訟法八条二項一号が、「審査請求のあった日から三箇月を経過しても裁決がないとき」には、審査請求前置を緩和し、原則にかえって直ちに出訴することを認めているのは、「裁決庁の裁決の遅延によって、国民の司法救済が遅れることを防止するための規定である」(別冊法学セミナー基本法コンメンタール「行政救済法」二二八頁)と説明されている。そうであるなら、たとえ行政内部の見直しの道として労災保険法のように二審制度を採用している場合においても、原判決のように、行政事件訴訟法八条二項一号の「審査請求」を労災保険法にいう「再審査請求」を指すものと解する合理的な理由は何一つ見いだせない。原判決も「第一審たる審査請求に簡易迅速な処理を期待し」と判示しているのに、本件の場合、現時点において既に一年以上も経過してなお第一審の決定がない。

仮に、行政事件訴訟法八条二項一号を原判決のように解するとしても、裁決庁の裁決の遅延によって、国民の司法救済が遅れることを防止するためには、第一審たる審査請求のあった日から三か月を経過しても決定がないときは、直ちに第二審たる労働保険審査会への再審査請求ができる道がなければならない。しかし、そのようなことも認められていないので、行政庁の怠慢による裁決遅延によって、国民の権利救済が遅れることのないように法の解釈がなされるべきである。

二  被控訴人

控訴人の右主張は争う。

第三証拠

本件記録中の証拠目録(原審)記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本件訴えは却下すべきものと判断する。その理由は、原判決の「第三 争点に対する判断」で説示するとおりであるから、ここにこれを引用する(ただし、原判決四丁表一行目の「更に」を「さらに」と、同八行目の「言い難い」を「いい難い」とそれぞれ改める。)。

二  よって、原判決は正当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西川賢二 裁判官 宮城京一 裁判官 喜如嘉貢)

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